科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)に応募した際に提出した文書の続きをご紹介致します。この研究は、3年間計画で行う予定です。
記
③挑戦的萌芽研究としての特色
学生の不祥事に関しては、各大学でその事実を可能な限り秘密にしようとする傾向がある。調査対象を国立大学法人に限定する理由は、情報公開制度を活用するならば、資料の入手が可能となるのではないかと考えたからである。しかし、情報公開がなされるかについては不明である。特に、インタビュー調査では、大学が積極的に応じない可能性が高いかもしれない。
このリスクを克服できるならば、抜本的な対応策を検討する方途が開けるのではないかと思われる。
④学術的な特色及び予想される結果と意義
わが国では、このような研究は乏しく、不祥事を起こした学生に対して、高等教育機関である大学に相応しい対応策を考える上での手掛かりを提供できると思われる。
研究の斬新性・チャレンジ性
近年、これまでの常識では考えられないような不祥事を起こす学生が増えているように思われる。性的非行、飲酒強要による死亡、薬物使用、ストーカー行為などの学生の不祥事が多発している。
大変残念なことであるが、研究代表者の所属する大学においても、強姦致傷罪や強盗罪の容疑で逮捕・起訴される学生が相次いでいる。
このような不祥事が起きると、大学当局は記者会見を開き、当該学生を退学などの懲戒処分に附した事実を公表するとともに、再発防止策を講じることを表明することが通例のようである。
しかしながら、このような対応は、高等教育機関である大学としてふさわしい対応策であろうか。
大学が謝罪会見を開き、その責任を表明するのであれば、その時点から、学生の起こした不祥事の被害者の救済と加害者である学生の更生という観点に基づいた対応をするべきではないだろうか。学生の不祥事が後を絶たない現実は、高等教育機関としての大学の在り方に反省を求めていると捉えるべきではないだろうか。
わが国では、これらの不祥事件を引き起こした学生に対する対応は大学の教員によってなされる。
ところが、学生支援業務の発達したアメリカでは、不祥事を起こした学生に対処する部署や専門職員が存在しているとの報告がなされている(廣内大輔「第7章米国における学生支援職員の業務に関する調査―学生が起こす倫理的・法的問題への懲戒措置担当部署へのインタビュー調査から」RIHE105巻71頁以下(2009年)。この報告では、専門職員が、教育活動の一環として学生に反省を促すとともに、その後の学生の成長を見守る制度が構築されているとの指摘がなされている。
本研究は、所属する学生の不祥事に対して、大学が、その責任を表明するのであれば、どのような対応をなすべきかを検討するための基礎的な研究である。このような観点からの研究は、わが国ではほとんどなされていないようである。
学生の不祥事に関しては各大学でその事実を可能な限り秘密にしようとする傾向がある。そのため、特に、インタビュー調査では、大学が積極的に応じない可能性が高いように思われる。
しかし、調査のリスクを克服できるならば、抜本的な対応策を検討する方途が開けるのではないかと思われる。この研究の成果は、日本の大学の在り方を変える契機となるのではないかと思われる。
研究計画・方法
平成27年度は、まず、学生の不祥事に関する情報を収集するためのアンケート調査項目を作成する。つぎに、国立大学法人を対象に郵送によるアンケート調査を実施するとともに、情報公開制度を活用して、学生の不祥事に関する情報の開示請求を行う。さらに、各種のデータベースを活用して学生の不祥事に関する情報を収集するとともに、大学教育、少年非行、犯罪被害者学に関する文献を収集する。
平成28年度は、まず、前年度の調査結果に基づき、複数の大学を選定し、関係者に対する聞き取り調査を実施する。つぎに、平成27年度に収集した情報を分析し、国立大学で起きた学生の不祥事に関する資料を作成する。
平成29年度は、平成28年度に作成した資料の分析結果を報告書にまとめるとともに、その内容を大学教育学会などの複数の学会で発表する。
(平成27年度の計画)
以下の研究活動に取り組む。
1. これまで学生が起こした不祥事についての情報収集を行う。
近年、大学生が様々な不祥事を起こしているが、その実態については、統計的な資料すら用意されていないのではないかと思われる。
そこで、まず、学生の不祥事に関する情報を収集するためのアンケート調査項目を作成する。
つぎに、各国立大学法人に対して、郵送によるアンケート調査を実施する。
2. 情報公開制度を活用して、各国立大学法人から、学生に関する懲戒制度についての資料と所属学生の不祥事に関する情報を収集することにしたい。
懲戒制度と不祥事に関する情報を入手することによって、各大学の現状を把握したいと考えている。
3. 各種のデータベース、特に、各新聞社のデータベースを活用して学生の不祥事に関する情報を収集する。
4. 大学教育、少年非行、犯罪被害者学に関する研究文献の収集を行う。
大学教育に関する研究からは、大学が目指すべき学生の育成方法に関する知見が得られるであろう。
少年非行に関する研究からは、不祥事を起こした学生に、その更生を目指すという観点からどのような対応をなすべきかを検討するための手掛かりが得られるであろう。
また、犯罪被害者学の研究からは、学生の不祥事の被害者への対応の在り方を考える上での課題を明らかにすることができるであろう。
つづく
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大学と各種の専門学校で、法律学、哲学、社会学、家族社会学、家族福祉論、初等社会、公民授業研究、論理的思考などの科目を担当しています。
KJ法、マインド・マップ、ロールプレイングなどの技法を取り入れ、映画なども教材として活用しながら、学生と教員が相互に学び合うという参画型の授業を実践しています。現在の研究テーマの中心は、法教育です。
私は命ある限り、人間を不幸にする悪と闘い抜く覚悟です。111歳までは、仕事をしようと決意しています。